2016年6月8日水曜日

日銀の国債買い入れは国家破産の下準備

■国家破産

 これから世界で起きること ただちに日本がすべきこと

 吉田繁治・著  PHP研究所


 日本で財政破産が起こったときの仮想風景

 米国のノーベル賞経済学者クルーグマンは、デフレを終わらせ、日本の期待インフレ率を高めるためには、日銀が国債を買って、いくらでもマネーを刷ればいいといまも主張しています。レスター・サローも同じ主張ですが、これらは、以下の展開をみない無謀な論です。

 クルーグマンのすすめで、日銀が「債券市場から国債を物価が上がるまでいくらでも買う」という姿勢を見せれば、
 ①債券市場では国債価格の下落を恐れた売りが殺到して金利が上がり、
 ②満期が来る国債も、日銀引受けを迫られるでしょう。
 この結果は、どうなるか?
 借換債158兆円、新規債40~50兆円で、1年に200兆円くらいの「1万円札の発行」になる可能性もあります。200兆円が金融機関の当座預金(金利ゼロ)に貯まります。金融機関は、金利ゼロのマネーを200兆円ももてば、赤字になります。
 このため、なにかで運用しようとする。企業への貸付は、リスクが高い。国債は下落リスクがあるので買えないとなると、投資信託やヘッジ・ファンドへの預託、または金利がつく外貨預金でしょうか。
 こうして日銀が刷った日本円の膨大なマネーが、海外に流出します(キャピタル・フライト)。円の海外流出は円売り・ドル買い、またユーロ買い、元買いなので、為替市場で、円は暴落します。
 円暴落の気配があれば、海外が日本にもつ債券(日本の株や国債)の312兆円は、大挙して売られます。遅れれば、円安差損の損をするからです。
 円債券を海外から大きく売られた日本の金利はいっそう上がって(10%以上か?)、950兆円規模の既発国債の価格と株価は、再び底なしに下がるでしょう。国債を買う日銀も、バランス・シートに埋めきれない巨大な損失をかかえます。信用を失った日銀が発行する円の価値は、下がるのです。

 1%の円10年債の期待金利が、ギリシア、ポルトガルのように10%に上がるとどうなるか。
[国債を含む債券価格=(1+額面に対する表面利率×残存期間)×100÷(1+期待長期金利×残存期間)」です。[国債価格=(1+1%×10年)X100÷(1+10%×10年)=110÷2=55]です。国債価格は45%も下落し、まぎれもない国家破産です。
 国債をもつ金融機関は、一斉に全部つぶれ、預金取付けが起こります。1年50兆円の公的年金が払えない。35兆円の公的医療費も支払えず、40兆円の全公務員給料はもちろん払えない。国債の45%の下落で、400兆円規模の損失が生じるからです。ソ連崩壊(1989年)のとき起こったことがこれでした。

 このとき、日経平均はジェット・コースターのように下がり、5000円以下でしょうか。
 $1=200円という円安に回帰するかもしれません。輸出は、徐々に増えるでしょうが、輸入の資源がいまの3倍に向かって上がります。貿易は赤字になります。これが、所得増のないインフレ、つまりスタグフレーションを生みます。

 一般にいえば、通貨価値の下落は、ハイパー・インフレに向かう物価の高騰です。しかし10年代の経済では、戦後にあったような、物価が10倍、100倍、300倍に上がるハイパー・インフレは起こりません。
 先進国での国家財政の破産を、即、ハイパー・インフレとする多くの論は、世界の商品供給力が増え、グローバルなコンテナによる商品流通が急増したことをみない粗雑な俗論です。500兆円ものマネー(購買力)が日々、巨大に移動し、商品も高速で国境を越えるグローバル化した経済では、60年前の資本にも商品にも移動の障壁があった時代とは、根本的に異なるのです。

 インフレの性格が異なる

 新興国の工業化と、先進国での生産力余剰があって、消費者物価は上がりにくい。ハイパー・インフレになるのは、たとえば戦争で、工場、農地、商品流通が破壊され、必需の商品や食品需要を満たせないときです。
 ただし、供給量に限界がある資源・エネルギー・穀物・食品等の基礎生活物資は、財政破産を起こした国にとって数倍の価格に高騰するでしょう。

 通貨が2分の1に下がった国の輸入物価は2倍に上がるので、それを原因にした商品インフレは必ずありますが、ハイパー・インフレとはいえません。ハイパー・インフレは物価が10倍以上です。
 わが国で国家の財政破綻があったときの消費者物価のインフレは50~100%と想定します。不動産も、10年後の人口が大きく減らない地域では、2倍の価格になるでしょう。

 政府部門は、財政が破綻すると、400万人の公務員を100万人以上削減し、給与水準を70%におさえる削減を図らねばならなくなります。

 債券市場が国債を買わないこと、あるいは国債先物が売られることによる国家財政の破産は、将来の日本のために悪いことだけではない。避けるべきは、日銀が財政破産を避ける目的で国債を買うマネーを刷り続ける量的緩和の継続から起こる、ハイパーに近いインフレです。これは国債と金融資産の価値を紙くずにします。

 国家財政の破産は、官僚組織(国家+地方+独立行政法人)の財政破産です。この世の終わりではない。公務員は給料が減らされ、定員が削減され、年金と公的医療費、および社会福祉費が減って、増税に向かう変化です。これは選択肢ではない。そうせざるをえないのです。

 戦争とは違い、信用危機・恐慌は、工場、店舗、オフィス、ホテル、レストラン、インフラ設備、国土と自然、そして人材と技術は残ります。街の外見は変わらない。海辺の街を一瞬で瓦礫にした悪夢のような、人々の命を根こそぎ奪う津波ではない。大震災と原発を経験した日本人にとって、これ以上にこわいものはない。3・11にくらべれば、たかがお金です。国家財政破産があっても、悲観しないことです。

なわ・ふみひと ひとくち解説
  本書で特に参考になると思う内容を以下にピックアップしました。それぞれに私のコメントをつけていますので、ぜひ参考にしてください。

●国債をもつ金融機関は、一斉に全部つぶれ、預金取付けが起こります。1年50兆円の公的年金が払えない。35兆円の公的医療費も支払えず、40兆円の全公務員給料はもちろん払えない。

 国債が暴落すれば、たくさんの国債を保有している銀行や保険会社等は倒産し、預金の取り付け騒ぎが起こるのは避けられません。政府は混乱を鎮めるためという理由で堂々と「預金封鎖」を実施するでしょう。国民は預金を下ろすことはできなくなるのです。その間にインフレが進めば、お金の価値はどんどん暴落していきます。ですから、国家破産は「国民破産への道」と考えておく必要があるのです。

●ハイパー・インフレになるのは、たとえば戦争で、工場、農地、商品流通が破壊され、必需の商品や食品需要を満たせないときです。
ただし、供給量に限界がある資源・エネルギー・穀物・食品等の基礎生活物資は、財政破産を起こした国にとって数倍の価格に高騰する

 日本が国家破産したあとに首都直下地震、南海トラフ地震、あるいは富士山の噴火等によって工場や農地、商品流通など社会のインフラが破壊されたとしたらどうなるでしょうか。それこそ戦後と同じかそれ以上のハイパー・インフレに見舞われることになるでしょう。私が予測する「日本沈没」のシナリオです。

●避けるべきは、日銀が財政破産を避ける目的で国債を買うマネーを刷り続ける量的緩和の継続から起こる、ハイパーに近いインフレです。これは国債と金融資産の価値を紙くずにします。

 「国家破産」の影響について、どちらかと言えば楽観的な著者ですが、現在日銀が行なっている「国債を買ってマネーを刷り続ける量的緩和」はハイパー・インフレを起こし、国債と金融資産(株や銀行預金など)を紙くずにすると述べています。政府・日銀はすでにルビコン川を渡ったのです。国家破産後のハイパー・インフレによって国債が紙くずになる日が近づいています。

●公務員は給料が減らされ、定員が削減され、年金と公的医療費、および社会福祉費が減って、増税に向かう

 公務員の給料や定員が減らされることには、国民の多くは歓迎するかも知れません。ただし、警察や消防などが十分機能しなくなることは社会不安を増大させます。街に失業者が溢れ、今日食べるものに事欠く人たちが増えていけば、日本社会も外国並みの治安の悪化は避けられないでしょう。もちろん、私たち自身が失業し、あるいは年金を減らされてしまって、いつ路頭に迷うことになるかも知れません。
 現在のアメリカのように、国家破産もしていないのに、リーマンショック以降4,000万人を超える人たちが、政府が支給するフードスタンプ(低所得者に向けた食料費補助制度)によって食いつないでいるような社会が訪れることも覚悟しておく必要があるでしょう。

●戦争とは違い、信用危機・恐慌は、工場、店舗、オフィス、ホテル、レストラン、インフラ設備、国土と自然、そして人材と技術は残ります。街の外見は変わらない。

 現在、日本はアメリカから戦争を仕掛けられているのです。ただ、戦争といっても、その武器は爆撃機や戦車、戦艦などではありません。今日の戦争は経済戦争、情報戦争、そして気象兵器による戦争なのです。
 アメリカは早くから(1990年ごろから)日本に経済戦争を仕掛け、まもなく日本の国家破産を実現させようとしています。そして、その次は人工地震・津波、さらには富士山の噴火等の気象兵器によって、文字通り日本という国を世界地図から消し去ってしまおうとしている、というのが私の分析です。
 地震や津波に襲われれば、街の外見は変わります。工場も、店舗も、オフィスも、レストランも、国土と自然も破壊され、多くの人材と技術も失われることでしょう。
 そのようなアメリカ(を裏から支配する層)の攻撃に日本国民が気づかないように、マスコミを使った巧妙な情報戦によって、日本人の関心を逸らしていると思われます。まずは、国家破産が近づいていることに気づかないように、そして、そのあとに人工的な自然災害を起こしても、それは純粋な天災だと思わせるように……。
 「原発の再稼働に賛成か反対か」とか「集団的自衛権に賛成か反対か」と、国民の関心を別のテーマに向けさせながら、国民を路頭に迷わせる国家破産とハイパー・インフレの危機が近づいていることを隠しているのがわかります。戦時中と同じように、操られたマスコミを使っての情報戦で、国民はいとも簡単に煽動されるのです。




0 件のコメント:

コメントを投稿